科学と人間性で医療を支える

ISHIDA TAKASHI

石田 高司

いしだ内科ファミリークリニック

愛知県安城市出身。名古屋市立大学医学部を卒業後、名古屋第一赤十字病院、静岡済生会総合病院で血液内科医として研鑽を積む。その後、名古屋市立大学大学院医学研究科にて医学博士を取得し、研究と臨床の両面で研鑽を重ねる。岩手医科大学医学部 内科学講座 血液腫瘍内科分野 主任教授、名古屋大学大学院医学系研究科 分子細胞免疫学 特任教授として、臨床・研究・教育に従事。これらの大学での経験を通じて得た多くの学びとご縁に深く感謝しつつ、そこで培った知識と経験を地域医療に還元すべく、地元・幸田町に「いしだ内科ファミリークリニック」を開院。専門は血液内科、腫瘍免疫学、成熟T細胞腫瘍。

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AICHI

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血液内科分野をリードしてきた医師のクリニック

「患者さんをハッピーにすることが、自分が生きている意味です」そう穏やかに語るのは、いしだ内科ファミリークリニックの院長・石田高司先生。長年にわたり大学病院で血液内科医療の最前線に携わってきた石田先生は、今、故郷・愛知県で“家族の健康を支える町のお医者さん”として、新たな歩みを始めています。その根底にあるのは、科学に裏づけられた優しさと、人としての思いやり。「医学」と「人間性」、その両輪を大切にする石田先生の言葉には、医療の本質を見つめ続けてきた深い哲学がにじんでいます。

Q:いしだ内科ファミリークリニックの特徴を教えてください。
A(石田さん):標榜科目は内科・血液内科・小児科(小学生以上)です。生活習慣病から感染症まで幅広く診療し、血液疾患など専門的な領域にも対応しています。「ファミリークリニック」という名前には、ご家族全体の健康を見守る“かかりつけ医”でありたいという思いを込めました。おじいちゃん、おばあちゃんからお孫さんまで、三世代、四世代で通ってくださるご家庭もあります。どの世代の方にとっても安心して相談できる“頼れる存在”であり続けること、それが、私たちが最も大切にしていることです。

原点は若かりし時代の挫折と苦悩

Q:医師としての原点となった出来事を教えてください。
A:医師になって間もない頃、当時20代の私は、自分と同世代、あるいはそれよりも若い多くの造血器腫瘍の患者さんを担当しました。白血病やリンパ腫は、子どもや若い世代にも発症する疾患です。懸命な治療にもかかわらず、多くの患者さんを救うことができなかった現実に、何度も心を打ち砕かれました。
患者さんご自身は私に「まだ死にたくない。助けてください」、小さな子をもつ患者さんは「幼い我が子を残して死ぬわけにはいきません」と涙ながらに訴えます。そして患者さんの親御さんは、「この子の人生はこれからなんです、私たちの宝物なんです、どうか助けてください」と必死に願われます。その一つ一つの言葉が、魂の叫びとして胸に深く刻まれました。
私は、先輩や同僚の先生方、最先端医療施設の先生方から学び、全力で治療にあたりましたが、それでも救えなかった命がありました。その経験を通じて痛感したのは「医師としての能力がなければ、人は救えない」という現実です。どれほど優しい気持ちがあっても、知識や経験が不足していれば助けられない命がある。その厳しい現実を、若くして突きつけられました。「もし自分以外の、より優れた医師が診ていたら救えたのではないか」そう自問する瞬間が、何度もありました。だからこそ「自分が診ていたから救えなかった」ということだけは、絶対にあってはならない。その想いが、私を今日まで突き動かしています。そのために私は、学び続け、経験を積み重ね、医師としての力を高めることに全身全霊を注いできました。
同時に、科学の力で造血器腫瘍を克服したいという強い使命感から、基礎研究にも深く取り組みました。

Q:開業に至るまでを教えてください。
A:大学時代は、上田龍三博士(現・名古屋大学大学院医学系研究科 特任教授)をはじめ、多くの素晴らしい仲間とともに、臨床・研究・教育に全力で取り組みました。抗体医薬モガムリズマブの基礎研究から臨床開発に至るまで深く関わる機会を頂き、同薬は日本発の薬剤として58の国と地域で実用化されています(2024年9月末時点)。その過程で、国の公的研究費による複数の研究プロジェクトに研究代表者または分担者として参画し、成果を多くの学術論文として国際的な英文誌に発表してきました。こうした取り組みを通じて、岩手医科大学医学部 内科学講座 血液腫瘍内科分野 主任教授として、また名古屋大学大学院医学系研究科 分子細胞免疫学 特任教授としての貴重な機会をいただきました。これらの経験は私にとってかけがえのない財産であり、関係の皆様に心より感謝しています。一方で、長年の臨床と研究を重ねる中で、次第に「もっと身近な場所で、一人ひとりの患者さんと生涯にわたって向き合いたい」という想いが強くなっていきました。その想いを形にする場として、地元・幸田町に「いしだ内科ファミリークリニック」を開院しました。大学で培った科学的な知識と経験を地域医療に生かし、患者さんの生活と人生に寄り添う医療を目指しています。

医療の土台は科学と人間性

Q:医療の現場で大切にしている考え方は何ですか?
A:まず何よりも大切にしているのは、患者さんが「幸せであること」です。医師として、患者さんが病気や健康状態を理由に不幸になってしまうことがないよう、常に最善の診療を尽くすことを心がけています。そして、医療には「科学」と「人間性(仁術)」の両輪が欠かせないと考えています。科学は、病気の理解や治療に不可欠な土台です。しかし、科学だけでは人を幸せにすることはできない。そこに、人を思いやる心や寄り添う姿勢、すなわち仁術が加わることで、はじめて医療は完成するのだと思っています。

Q:先生の専門分野である血液内科の経験は、どのように地域医療に生きていますか?
A:血液内科は、白血病や悪性リンパ腫など、命と真正面から向き合う場面の多い分野です。大学では臨床医として、また研究者として、常に科学的根拠に基づいた最善の医療を追求してきました。その経験を地域での診療にも生かし、科学的エビデンスに基づいた診断・治療を丁寧に行っています。現在も国際的な医学雑誌で副編集委員(Associate Editor)を務め、日々、最新の医学や科学に触れ続けています。当院を訪れる方々に「科学的・医学的根拠に基づいた診療を受けられる」という安心感を持っていただけること、それは、当院の大きな価値であると考えています。ただし、「科学的に正しいこと」だけが、患者さんにとって最良とは限りません。その方にはその方の生活の背景や価値観があります。だからこそ、科学的根拠を踏まえながらも、その人の人生が真に“幸せになるための医療”を、患者さんと一緒に考えるようにしています。

「幸せである」ことが大前提

Q:これからの展望を教えてください。
A:今後は、一般内科の枠を超えて、より専門的な血液疾患にも対応できる体制を、少しずつ整えていきたいと考えています。悪性リンパ腫や骨髄腫などの患者さんに対して、科学的根拠(エビデンス)に基づいた外来化学療法や免疫療法を、適正に行える環境を目指しています。こうした専門的な医療の実践には、地域の基幹病院や近隣の医療機関との連携が欠かせません。お互いに協力し合いながら、地域全体で患者さんを支える医療体制を築いていきたいと考えています。そして、地域の血液疾患の患者さんが“病とともにあっても幸せに生きられる”よう、最善の診療を行っていきたいと思います。
一方で、日常診療においては、特にインフルエンザなどの感染症が流行する時期には、多くの方にご相談をいただいており、地域の皆さまに支えられながら日々の診療を続けています。地域に根ざす「内科ファミリークリニック」として、地域のニーズである一般内科診療をおろそかにすることは、決して考えていません。血液腫瘍内科としての専門的医療と、地域のかかりつけ医としての一般内科診療。この二つを両立させることは簡単ではありませんが、少しずつ体制を整えながら、“町のクリニックから最先端医療を発信する” そんな挑戦を、ゆっくりでも確実に進めていきたいと考えています。

科学と仁術、理性と情熱、その両立を体現するのが、石田高司院長の医療です。大学教授として、最前線の臨床と研究に携わってきた知識と、患者さん一人ひとりの幸せを願う心。その両方を併せ持つ医師が地域にいるということは、この町にとって何よりの安心です。

「つきつめれば、医学とは、人を幸せにするための科学である」その言葉どおり、いしだ内科ファミリークリニックは、今日も静かに、そして確かに、地域の安心と笑顔を支え続けています。