RUN TOGETHER

INOUE ARATA

井上 新

あらた税理士法人

1956年、愛知県豊明市生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、同大学大学院会計学専攻修士課程修了。30歳で独立し、個人事務所として税理士業を開始。2015年、共同で「あらた税理士法人」を設立。税理士のほか、中小企業診断士、ITコーディネーター、行政書士としても活動し、全国各地の創業支援・講演に尽力。電子申告の先駆者として国税庁のサーバーに日本初の送信を行い、業界発展に大きく貢献した。豊明市代表監査員など多数の公職を兼務。

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AICHI

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経営者の悩みに寄り添う税理士法人

税理士として、そして経営者として、40年近くにわたり第一線で活躍する井上新代表。「あらた税理士法人」は、企業の“数字”を扱うだけの事務所ではなく、経営者の悩みに寄り添い、共に歩む“伴走型”の事務所として成長を続けています。名古屋を拠点に、公職・NPO活動・地域貢献にも力を注ぐ井上代表に、仕事への信念や人生の転機、そして次世代へのメッセージを伺いました。

Q:あらた税理士法人はどのような事務所ですか?
A(井上さん):税理士業務を中心に、中小企業診断士・ITコーディネーター・行政書士といった資格を活かして中小企業の経営全般をサポートしています。スタッフは現在27名。それぞれが自由な働き方をしながら、自分の責任でお客様に寄り添う体制を取っています。「9時から5時まで」といった決まりごとはありません。“お客様のためになることを自分のやり方で考える”ことを重視しています。成果を上げた社員には他事務所より高い報酬を支払う仕組みを整えています。利益を社員に還元することこそ、事務所が成長する原動力になると考えています。

Q:事務所運営で大切にしていることは?
A:うちの合言葉は「RUN TOGETHER(ともに走る)」です。お客様もスタッフも一緒に栄え、一緒に幸せになることを大事にしています。税理士事務所というと、税金計算や申告だけをするイメージが強いですが、私たちは“経営の伴走者”でありたい。経理や税務にとどまらず、経営者の悩みに寄り添い、課題を一緒に解決していくことを目指しています。そして社員には「自由にやりなさい」と伝えています。責任を持って行動すれば、仕事のやり方は人それぞれでいい。それが結果的にお客様との信頼関係を強くし、事務所全体の力を底上げしてくれると信じています。

マイナスをプラスに変える考え方

Q:そもそも税理士を目指されたきっかけは?
A:大学では会計学を研究していましたが、もともと博士課程に進みたかったんです。ところが、恩師から「お前、ドイツ語できないだろ?博士は無理だな。それより税理士のほうが面白いぞ」と言われまして(笑)。最初は冗談半分で受けた言葉でしたが、それが人生の転機になりました。そして実は、身長が低いことがずっとコンプレックスでした。けれど師匠が「その小柄さは特徴だ。誰も忘れない強みになる」と言ってくれて、マイナスをプラスに変える考え方を教えてくれたんです。そこから前向きに生きるようになり、人生が変わりました。

Q:そんなきっかけがあったんですね。そして創業されたのはいつでしょうか?
A:独立したのは30歳のときです。修行時代の先生に厳しく鍛えられたことが今の自分をつくりました。ゼロからのスタートでしたが、誠実な対応を評価してくださった銀行員の方々が「井上先生を紹介したい」と次々にお客様をつないでくれたんです。そうした“ご縁の連鎖”で少しずつお客様が増えました。数年前にもう一人の税理士と共同で法人化しました。税理士法人は2人以上いなければ設立できないので、信頼できる仲間ができたことも大きな転機でした。社名の「あらた」は、私の名前から取っていますが、新しいことに挑戦し続けたいという想いを込めています。

原動力は「好奇心」

Q:電子申告を日本で最初に行ったと伺いました。
A:はい。まだ「e-Tax」という言葉すら一般的でなかった2004年に、私は名古屋税理士会の情報システム委員長として、ベンダーに頼らず「e-Tax」ソフトで、国税庁のサーバーに日本で初めて電子申告を送信しました。当時はマニュアルも整備されておらず、まさに手探り。でも「これからは電子の時代になる」と信じて挑戦しました。多くのメディアに取材されて、そこから全国で講演行脚する機会も増えました。振り返るとあの挑戦が、私の税理士人生を大きく変えた出来事でしたね。

Q:ご自身の活動や信念の源は?
A:行動の原動力は「好奇心」です。面白そうだと思ったことには、どんどん挑戦する。それが私の生き方です。歴史も大好きで、自分のことを“歴オタ”と呼んでいます。織田信長、坂本龍馬、渋沢栄一…どの人物も逆境を乗り越えて時代を切り開いた人たちです。彼らの生き方に学び、私も苦境を力に変えるようにしています。また、NPO法人「徳川宗春ロマン隊」の理事として、名古屋の歴史や文化を広める活動にも携わっています。地域が持つ魅力を再発見し、次の世代へ伝えることも、私の社会貢献のひとつだと考えています。

本当の安定は“挑戦の先”にしかない

Q:これからの目標を教えてください。
A:事務所を永続的に発展させること。そして、今20名規模のスタッフを50人、100人へと増やしていきたいと考えています。ただ、どれだけ規模が大きくなっても、“中小企業の味方”という原点は変えません。あらた税理士法人は、経営に悩む創業者や小規模事業者の力になりたい。共に成長し、地域経済を支える存在であり続けたいと思っています。

税務の枠を超え、人と地域をつなぎ、社会をより良くする…井上新代表の歩みは、まさに「RUN TOGETHER」の精神そのもの。あらた税理士法人はこれからも、数字の向こうにある“人の幸せ”を見つめながら、地域とともに走り続けます。

「温故知新、古き良き時代を軽んじず、自分の“好奇心”を大切にしてほしい。そして、誰かのため・社会のために役立つ生き方を選んでほしいと思います。最近は安定した仕事がいいと言う若者が増えていますが、本当の安定は“挑戦の先”にしかありません。失敗を恐れず、自分の理想に向かって動いてほしい。思い切りやって、たとえ転んでも、そこから学べばいいんです。「諸君!狂いたまえ」と言い放った吉田松陰のように、自分の信念に熱くなれる人生を歩んでください。私も、まだまだ“好奇心のままに”動き続けますよ」