どんな場所でも
全力を尽くす
HANAI CHIHARU
花井 千治
有限会社花井養鶏場
名古屋学院大学卒業後、23歳で家業の花井養鶏場に就職。昭和31年創業の養鶏場を2代目として継承し、25歳頃から実質的に経営を担う。2000年に法人化し、代表取締役に就任。現在は約10万羽の鶏を飼育し、名古屋コーチンをはじめとする高品質卵の生産を手がける。30年以上にわたり現場に立ち続け、最新技術と徹底した衛生管理を両立させながら、地域を代表する養鶏場として名古屋コーチン文化を守り育てている。
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AICHI
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“地鶏の王様”を護り続ける養鶏場
常滑に、静かに羽音を響かせる養鶏場があります。名古屋コーチンを中心に、安心でおいしい卵を届け続けている、花井養鶏場です。創業から60年以上。2代目として現場とともに歩み続けてきた花井千治さんは、時代の変化とともに経営の舵を取り、次世代へとバトンをつなぎます。便利な時代だからこそ、根っこの部分を知っておくことが大事…そんな花井さんの言葉には、真摯なものづくりの姿勢と、次の代への温かなまなざしが見えます。
Q:花井養鶏場の規模と特徴を教えてください。
A(花井さん): 全体でおよそ10万羽の鶏を飼っています。そのうち約2万5千羽が“地鶏の王様”、名古屋コーチンです。白い卵を産む鶏が1万羽、残りは赤玉系です。農場は常滑・東浦・大府の3か所に分かれていて、常滑が約6万羽、東浦が3万羽弱、ここ大府が1万羽ほど。名古屋コーチンは主に東浦と常滑で育てています。
Q:花井養鶏場の規模と特徴を教えてください。
A(花井さん): 全体でおよそ10万羽の鶏を飼っています。そのうち約2万5千羽が“地鶏の王様”、名古屋コーチンです。白い卵を産む鶏が1万羽、残りは赤玉系です。農場は常滑・東浦・大府の3か所に分かれていて、常滑が約6万羽、東浦が3万羽弱、ここ大府が1万羽ほど。名古屋コーチンは主に東浦と常滑で育てています。
次につながる準備こそ最高の投資
Q:経営を任されて最初に取り組んだことは何ですか?
A: まず「鶏舎を全部建て直す」と決めました。当時はすべて手作業で、餌も一輪車で運ぶような環境でした。これでは未来がないと思って、思い切って全部壊し、更地にして新しい設備を建てたんです。当時25歳、周囲からは「よく親が許したね」と言われましたが、やるしかなかった。自分で作ったPB卵「元気くん」の販路が広がっていたので、なんとかなるという確信もありました。
Q:反対もあった中で踏み切れた理由は?
A: 結局は「安定して働ける環境を作ることが一番の投資」だと思ったからです。我々の業務は体力仕事ではありますが、それを少しでも軽くしないと人が続かない。そのテコ入れに伴うリスクを取れたかどうかが、今の経営につながっていると思います。
Q:最近の養鶏業では、暑さと鳥インフルエンザ対策が大きな課題だと伺います。
A:そうですね…特に鳥インフルエンザは経営者として一番恐ろしい問題です。もし発生すれば全羽処分という事態にもなりかねません。だからこそ事前の対策は重要です。たとえば名古屋コーチンを1か所に集中させず、複数の農場に分散してリスクを減らしています。また、2025年1月にはすぐ隣の農場で発生したと連絡があって、正月早々、もう背筋が凍りましたね。でもその2年前から自分なりにシミュレーションして、消毒や不織布の準備はしていたので、なんとか乗り切ることができました。この仕事は「準備しておいてよかった」と思えることがすべてです。
A: まず「鶏舎を全部建て直す」と決めました。当時はすべて手作業で、餌も一輪車で運ぶような環境でした。これでは未来がないと思って、思い切って全部壊し、更地にして新しい設備を建てたんです。当時25歳、周囲からは「よく親が許したね」と言われましたが、やるしかなかった。自分で作ったPB卵「元気くん」の販路が広がっていたので、なんとかなるという確信もありました。
Q:反対もあった中で踏み切れた理由は?
A: 結局は「安定して働ける環境を作ることが一番の投資」だと思ったからです。我々の業務は体力仕事ではありますが、それを少しでも軽くしないと人が続かない。そのテコ入れに伴うリスクを取れたかどうかが、今の経営につながっていると思います。
Q:最近の養鶏業では、暑さと鳥インフルエンザ対策が大きな課題だと伺います。
A:そうですね…特に鳥インフルエンザは経営者として一番恐ろしい問題です。もし発生すれば全羽処分という事態にもなりかねません。だからこそ事前の対策は重要です。たとえば名古屋コーチンを1か所に集中させず、複数の農場に分散してリスクを減らしています。また、2025年1月にはすぐ隣の農場で発生したと連絡があって、正月早々、もう背筋が凍りましたね。でもその2年前から自分なりにシミュレーションして、消毒や不織布の準備はしていたので、なんとか乗り切ることができました。この仕事は「準備しておいてよかった」と思えることがすべてです。
「なぜ」を第一に考える
Q:名古屋コーチンの飼育で大切にしていることは?
A:とにかく“健康第一”です。名古屋コーチンは他の品種に比べて繊細で、暑さに弱い。夏は40度を超える日もあるので、冷風装置を導入しています。紙フィルターに井戸水を流し、気化熱で空気を冷やす仕組みで、湿度が低ければ5〜6度温度を下げることができます。鶏たちが快適に過ごせる環境を整えることが、結果的に卵の品質を守ることにつながるんです。
Q:長く経営を続けてこられて、ピンチをどう乗り越えてきたんでしょうか?
A:それは「原因を知ること」です。機械が止まった時も、電気が落ちた時も、まず“なぜ”を考える。卵の割れを音で判定する選別機も、モーターも、仕組みを理解していれば自分でその“なぜ”そうなのかがわかるから、修理できる。今の若い世代は便利な環境で育っているけど、根本を知らないと何も直せない。だからこそ「知識を持つこと」が一番の武器になるんです。
Q:息子さんたちが新しい取り組みを進めているそうですね。
A: そう。コラボ企画やSNSでの発信など、私の世代にはなかったやり方をしています。最初は「本当に売れるの?」と不安もありましたけど(笑)、無理のない範囲でやるならどんどん挑戦してほしいと思っています。私たちの世代は“つくる”が中心だったけれど、これからは“伝える”ことも大事な時代。見た目やデザインを整えることも含めて、若い感性に任せていますね。
A:とにかく“健康第一”です。名古屋コーチンは他の品種に比べて繊細で、暑さに弱い。夏は40度を超える日もあるので、冷風装置を導入しています。紙フィルターに井戸水を流し、気化熱で空気を冷やす仕組みで、湿度が低ければ5〜6度温度を下げることができます。鶏たちが快適に過ごせる環境を整えることが、結果的に卵の品質を守ることにつながるんです。
Q:長く経営を続けてこられて、ピンチをどう乗り越えてきたんでしょうか?
A:それは「原因を知ること」です。機械が止まった時も、電気が落ちた時も、まず“なぜ”を考える。卵の割れを音で判定する選別機も、モーターも、仕組みを理解していれば自分でその“なぜ”そうなのかがわかるから、修理できる。今の若い世代は便利な環境で育っているけど、根本を知らないと何も直せない。だからこそ「知識を持つこと」が一番の武器になるんです。
Q:息子さんたちが新しい取り組みを進めているそうですね。
A: そう。コラボ企画やSNSでの発信など、私の世代にはなかったやり方をしています。最初は「本当に売れるの?」と不安もありましたけど(笑)、無理のない範囲でやるならどんどん挑戦してほしいと思っています。私たちの世代は“つくる”が中心だったけれど、これからは“伝える”ことも大事な時代。見た目やデザインを整えることも含めて、若い感性に任せていますね。
全力を尽くしているか
Q:今後の花井養鶏場の展望を教えてください。
A: 現在試験している“遠赤外線水”の効果に期待しています。生命体を活性化させる作用があるらしく、鶏に与えることで卵の栄養価が高まる可能性がある。まだ試験段階ですが、こういう新しい技術を積極的に取り入れていきたいですね。あとは、私がやるのではなく、次の世代が自分の手で未来をつくっていければそれでいい。私はそれを支える立場でいたいと思っています。
技術を学び、時代に合わせて変化しながらも、“安心でおいしい卵を届ける”という原点は変わりません。次世代がその想いを受け継ぎ、名古屋コーチンの味と文化を未来へつないでいく、花井養鶏場の挑戦は、これからも続いていきます。
「自分が置かれた場所で全力を尽くすこと。結果に対して“自分なりの達成感”を持つこと。うまくいかない時も、自分で考え抜いて形にした経験は、必ず次につながります。全力を尽くしたかどうかは、鶏を見ればわかります。鶏は正直です…手を抜けば、卵の質にも出ますから」
A: 現在試験している“遠赤外線水”の効果に期待しています。生命体を活性化させる作用があるらしく、鶏に与えることで卵の栄養価が高まる可能性がある。まだ試験段階ですが、こういう新しい技術を積極的に取り入れていきたいですね。あとは、私がやるのではなく、次の世代が自分の手で未来をつくっていければそれでいい。私はそれを支える立場でいたいと思っています。
技術を学び、時代に合わせて変化しながらも、“安心でおいしい卵を届ける”という原点は変わりません。次世代がその想いを受け継ぎ、名古屋コーチンの味と文化を未来へつないでいく、花井養鶏場の挑戦は、これからも続いていきます。
「自分が置かれた場所で全力を尽くすこと。結果に対して“自分なりの達成感”を持つこと。うまくいかない時も、自分で考え抜いて形にした経験は、必ず次につながります。全力を尽くしたかどうかは、鶏を見ればわかります。鶏は正直です…手を抜けば、卵の質にも出ますから」