“不易流行”の精神で
次の100年へ
BAN TAISUKE
坂 泰助
株式会社坂角総本舖
1965年、愛知県生まれ。愛知学院大学卒業後、旧東海銀行に入行。約4年間の勤務を経て1993年に家業である株式会社坂角総本舖へ入社。製造現場を経て、1999年に取締役営業部長、2006年専務取締役、2016年代表取締役社長に就任。現在は主力商品〈ゆかり〉を“100年続くブランド”に育てることを目標に、社内改革と人材育成に力を注ぐ。
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AICHI
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“人づくり”を大切にする老舗せんべいメーカー
創業から130年以上。名古屋を代表する老舗えびせんべいメーカー・坂角総本舖は、伝統を守りながらも新しい挑戦を続けています。主力商品〈ゆかり〉は、贈り物としても日常のおやつとしても愛される存在。その変わらぬ美味しさの裏には、「変えてはいけないものと、変えていくべきものを見極める」という信念があります。時代の変化を見極め、守るべき味を守りながら、新たな価値を生み出す。その姿勢を体現しているのが、五代目社長・坂泰助さんです。「ブランドづくりは人づくり」と語る坂代表は、社内の改善活動や若年層への発信、海外展開など、さまざまな取り組みを進めています。
Q:130年以上の歴史を誇る坂角総本舖、創業の背景を教えてください。
A(坂さん):創業は明治22年、1889年にまでさかのぼります。初代・坂 角次郎(ばん かくじろう)は、もともと織物業を営んでいましたが、時代の変化を感じ取り、地元で盛んだった「えびせんべい作り」に転業しました。以来、「海老を中心とした海の幸を、美味しいお菓子に仕立てる」ことを大切にしてきました。
現在の主力商品〈ゆかり〉が生まれたのは昭和41年です。当時の社長(私の父)が「これからは高くても良いものを作らねば」と考えていたところ、祖父が七輪で焼いていた特別な煎餅に出会ったことがきっかけでした。手間もコストもかかるが、格別に美味しい。この煎餅を通して贈る人と贈られる人のご縁をつなぐお手伝いができればと、商品名を“ご縁の縁”から〈ゆかり〉と名付けて販売したんです。当時1枚20円と、国鉄の初乗り料金と同じくらいの高級品でしたが、地元の皆さまが「贈り物」に選んでくださったことで全国に広まりました。
Q:130年以上の歴史を誇る坂角総本舖、創業の背景を教えてください。
A(坂さん):創業は明治22年、1889年にまでさかのぼります。初代・坂 角次郎(ばん かくじろう)は、もともと織物業を営んでいましたが、時代の変化を感じ取り、地元で盛んだった「えびせんべい作り」に転業しました。以来、「海老を中心とした海の幸を、美味しいお菓子に仕立てる」ことを大切にしてきました。
現在の主力商品〈ゆかり〉が生まれたのは昭和41年です。当時の社長(私の父)が「これからは高くても良いものを作らねば」と考えていたところ、祖父が七輪で焼いていた特別な煎餅に出会ったことがきっかけでした。手間もコストもかかるが、格別に美味しい。この煎餅を通して贈る人と贈られる人のご縁をつなぐお手伝いができればと、商品名を“ご縁の縁”から〈ゆかり〉と名付けて販売したんです。当時1枚20円と、国鉄の初乗り料金と同じくらいの高級品でしたが、地元の皆さまが「贈り物」に選んでくださったことで全国に広まりました。
社員が誇りを持つことがお客様の笑顔につながる
Q:坂社長ご自身が会社を継がれたきっかけを教えてください。
A:物心ついた頃から、家業を継ぐつもりでした。小学生の頃は、夏休みや冬休みに配送を手伝うのが当たり前。自然と「自分の将来はここにある」と感じていました。大学卒業後は一度外に出ようと決め、旧東海銀行に入行しました。社会人としての基礎を学べたのはもちろんですが、銀行員時代に多くの経営者と出会い、視野が広がりましたね。その後、入社してまず配属されたのは製造現場。2年間、現場の一社員としてえびせんべいを焼いていました。お客様の手に届く“1枚”がどれほどの手間で作られているか、体で学ぶ貴重な時間でした。
Q:社長就任後、特に力を入れていることは何でしょうか。
A:やっぱり「人づくり」ですね。どんなに立派なブランドでも、それを支えるのは“人”です。私が導入したのが、仕事の「ムダ・ムラ・ムリ」をなくし、業務の効率化と品質向上を目指すトヨタ式カイゼン活動を取り入れたOJTでした。現場の社員が自分で課題を見つけ、仲間と力を合わせて解決していく仕組みです。10年以上続けてきたことで、社員が会社を自分ごととして考えるようになってきました。創業者の言葉に「人さまに喜ばれる」というものがあります。それはお客様だけでなく、一緒に働く仲間にも通じる言葉です。社員が成長し誇りを持ってこの会社で働けることが、最終的にはお客様の笑顔につながるんだと確信しています。
A:物心ついた頃から、家業を継ぐつもりでした。小学生の頃は、夏休みや冬休みに配送を手伝うのが当たり前。自然と「自分の将来はここにある」と感じていました。大学卒業後は一度外に出ようと決め、旧東海銀行に入行しました。社会人としての基礎を学べたのはもちろんですが、銀行員時代に多くの経営者と出会い、視野が広がりましたね。その後、入社してまず配属されたのは製造現場。2年間、現場の一社員としてえびせんべいを焼いていました。お客様の手に届く“1枚”がどれほどの手間で作られているか、体で学ぶ貴重な時間でした。
Q:社長就任後、特に力を入れていることは何でしょうか。
A:やっぱり「人づくり」ですね。どんなに立派なブランドでも、それを支えるのは“人”です。私が導入したのが、仕事の「ムダ・ムラ・ムリ」をなくし、業務の効率化と品質向上を目指すトヨタ式カイゼン活動を取り入れたOJTでした。現場の社員が自分で課題を見つけ、仲間と力を合わせて解決していく仕組みです。10年以上続けてきたことで、社員が会社を自分ごととして考えるようになってきました。創業者の言葉に「人さまに喜ばれる」というものがあります。それはお客様だけでなく、一緒に働く仲間にも通じる言葉です。社員が成長し誇りを持ってこの会社で働けることが、最終的にはお客様の笑顔につながるんだと確信しています。
なにを変え、なにを変えないのか。
Q:130年以上続く中で、大切にしてきた価値観を教えてください。
A:それは「不易流行(ふえきりゅうこう)」の精神です。変えてはいけないものと、変えていくべきものを見極めることですね。たとえば〈ゆかり〉の味は変えずに、パッケージや贈り方を少しずつアップデートしてきました。最近では、名古屋らしい金色缶の〈ゆかり黄金缶〉や、ピーナッツを合わせた〈YUKARIco(ゆかりこ)〉など、新しい楽しみ方も提案しています。それもすべて、地元のお客様が「こういうのがあったらうれしい」と言ってくださる声から始まっています。私たちの仕事は、海老を焼くことではありません。人の笑顔をつくることなんです。
Q:最近は若い世代や海外にも積極的に発信されていますね。
A:はい。若い方にもえびせんべいをもっと身近に感じてほしいという思いから、「BANKAKU KITCHEN」という新しい挑戦をしています。えびを使った食事メニューや、焼きたての〈ゆかり〉をその場で味わえる工房併設店舗「BANKAKU FACTORY SHOP」など、体験を通してブランドを知っていただく場を増やしています。
A:それは「不易流行(ふえきりゅうこう)」の精神です。変えてはいけないものと、変えていくべきものを見極めることですね。たとえば〈ゆかり〉の味は変えずに、パッケージや贈り方を少しずつアップデートしてきました。最近では、名古屋らしい金色缶の〈ゆかり黄金缶〉や、ピーナッツを合わせた〈YUKARIco(ゆかりこ)〉など、新しい楽しみ方も提案しています。それもすべて、地元のお客様が「こういうのがあったらうれしい」と言ってくださる声から始まっています。私たちの仕事は、海老を焼くことではありません。人の笑顔をつくることなんです。
Q:最近は若い世代や海外にも積極的に発信されていますね。
A:はい。若い方にもえびせんべいをもっと身近に感じてほしいという思いから、「BANKAKU KITCHEN」という新しい挑戦をしています。えびを使った食事メニューや、焼きたての〈ゆかり〉をその場で味わえる工房併設店舗「BANKAKU FACTORY SHOP」など、体験を通してブランドを知っていただく場を増やしています。
変化を恐れず自分を磨き続けること
Q:これからの展開について教えてください。
A:国内で培ってきた信頼とブランド力をもとに、台湾や空港の免税店など海外展開にも取り組んでいます。さらに、成田・羽田・中部(セントレア)などの国際空港免税店での販売を拡大し、訪日外国人向けの需要にも対応しています。どんな国でも、贈り物には“人を想う心”があります。〈ゆかり〉を通じて、日本の贈り物文化を世界に広げていけたらと思っています。
えびせんべい〈ゆかり〉が贈り物として愛され続ける理由は、その一枚に込められた「人の想い」にありました。「お客様に喜ばれるものを、誠実に作り続ける」という創業から変わらぬ精神を受け継ぎながら、次の100年に向けて進化を続ける坂角総本舖。坂代表の穏やかな語り口の中に、老舗の誇りと未来への強い意思が感じられました。
「どんな時代でも変化は避けられないものです。私自身、1980年代に初めてアメリカに行ったとき、セルフ式のガソリンスタンドや24時間稼働のATM、巨大なショッピングモールを見て衝撃を受けました。日本もいつか、こういう時代が来る…と感じたその経験が、今の挑戦の原点になっています。とくに若い方たちには“変化を恐れず、自分を磨き続けること”を大切にしてほしいと思います。時代がどう変わっても、成長し続ける姿勢さえあれば、必ずチャンスはありますから」
A:国内で培ってきた信頼とブランド力をもとに、台湾や空港の免税店など海外展開にも取り組んでいます。さらに、成田・羽田・中部(セントレア)などの国際空港免税店での販売を拡大し、訪日外国人向けの需要にも対応しています。どんな国でも、贈り物には“人を想う心”があります。〈ゆかり〉を通じて、日本の贈り物文化を世界に広げていけたらと思っています。
えびせんべい〈ゆかり〉が贈り物として愛され続ける理由は、その一枚に込められた「人の想い」にありました。「お客様に喜ばれるものを、誠実に作り続ける」という創業から変わらぬ精神を受け継ぎながら、次の100年に向けて進化を続ける坂角総本舖。坂代表の穏やかな語り口の中に、老舗の誇りと未来への強い意思が感じられました。
「どんな時代でも変化は避けられないものです。私自身、1980年代に初めてアメリカに行ったとき、セルフ式のガソリンスタンドや24時間稼働のATM、巨大なショッピングモールを見て衝撃を受けました。日本もいつか、こういう時代が来る…と感じたその経験が、今の挑戦の原点になっています。とくに若い方たちには“変化を恐れず、自分を磨き続けること”を大切にしてほしいと思います。時代がどう変わっても、成長し続ける姿勢さえあれば、必ずチャンスはありますから」