繊維による“住宅火災ゼロ”を

TANAKA YOSHIHITO

田中 義人

T・Sトレーディング株式会社

愛知県一宮市出身。1968年慶応義塾大学法学部卒。伊藤忠商事を振り出しに繊維業界で長年経験を積み、2011年にT・Sトレーディング株式会社を設立。「燃えにくい素材」を活かした消防庁が推奨する防炎製品の開発から、オリジナルブランド「moenca」「moenain」や防炎物品を展開。住宅内で使用する繊維類を利用することにより、世界中で日本初の“住宅火災ゼロ社会”の実現を目指す。

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AICHI

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日常から「防災を当たり前にする」挑戦を続ける会社

高齢化が進む日本において、住宅火災はますます脅威となっており、ゼロになる気配が見えません。そんななか、“燃えにくい素材”を⽤いた製品開発をmarket in で続けている企業があります。「命を守る製品を、あたりまえに」そう語るのはT・Sトレーディング株式会社・代表取締役の田中義人さん。その言葉の背景には、日本の住宅火災の現実と、高齢者に、安全・安心な社会を実現する強い使命感がありました。

Q:T・Sトレーディングはどのような会社ですか?
A(田中さん):2011年3月に創業した防炎製品メーカーです。防炎カーテンや寝具、家具、衣類、雑貨など、暮らしの中のあらゆる製品を燃えにくくすることを目指しています。消防庁が推奨する防炎製品・物品など優れた製品が有るにも関わらず、「住宅火災」は一向に減りません。その上、高齢化による死亡事故が今もなお発生しています。私は日本の繊維による「住宅火災ゼロ」を実現した上で、世界に挑戦したいと考えています。“燃えにくい素材”を⽤いた製品開発をmarket in で続け「命を守る製品を、あたりまえに」を目指しているのです。

消防庁が推奨する品質基準を守る「moenca・moenain」

Q:どのような製品を展開しているのでしょうか?
A:主に「moenca(モエンカ)」と「moenain(モエナイン)」という2つのブランドを展開しています。寝具・家具・雑貨を扱うのが「moenca」、アパレルを扱うのが「moenain」です。燃えにくく、消防庁・(公財)日本防炎協会の認定を受けた素材を使用しています。火災を防ぐための“備え”としてではなく、「デザイン性・快適性・安全性・利便性」を兼ね備えた暮らしの一部として使ってもらえるよう工夫しています。

Q:燃えにくい製品づくりに取り組まれてきた理由は?
A:一言で申し上げると「住宅火災をなくしたい」からです。日本では、年間に約1万件以上の住宅火災が発生しています。それによって亡くなる方は、決して少なくありません。「防炎製品がもっと普及すれば、救える命がある」、そう確信して2011年にT・Sトレーディングを立ち上げました。消防法では、カーテンやカーペットなど一部の製品に防炎義務がありますが、実際には一般住宅ではまだまだ浸透していない、というのが現状です。私たちは、“防炎を特別なものではなく、日常の標準にする”ことを目指しています。

目指すは「住宅火災をゼロ」にすること

Q:御社の強みを教えてください。
A:私たちの特徴は、消防庁の推奨品でもある燃えにくい糸を使用した、かつお客様が望む製品を、market in で展開できることです。多くの企業は「防炎カーテン専門」や「防炎カーペット専門」というように特定分野に特化していますが、当社は「暮らし全体を燃えにくくする」という発想で事業を展開しています。だから様々な分野に挑戦を続けているんです。カーテン・寝具・衣類・家具・雑貨…住宅内で使用する繊維類すべてを防炎化することで、住宅全体を守る仕組みをつくっています。また日本だけでなく海外展開も視野に入れています。「moenca」「moenain」というブランドが、いつか“安全の代名詞”として世界中で認識されるようにしたいと思っています。

Q:防炎製品の普及には、どのような課題がありますか?
A:最大の課題は、まだ「防炎=特別なもの」という意識が根強いことです。本来、「moenca」「moenain」といった防炎製品は誰もが手に取れるものであるべきです。「火事に備えて買う」のではなく、“最初から燃えにくいものを選ぶ”社会に変わる必要があります。そのため、私たちは「住宅火災防火アドバイザー制度」を立ち上げました。⼈⼝が約30万⼈のエリアから、防火意識の高いスタッフの協力のもと、全国に住宅火災防⽕アドバイザーを増やす取り組みをしています。すでに現在、鹿児島・千葉・埼玉・岩手の各地で活動が始まっています。こうした地域のネットワークを広げながら、“燃えにくい生活”を社会全体に根付かせたいと考えています。皆の力で「住宅火災ゼロ」の日本にしていきたい。少しでも興味をお持ちの方がいらっしゃれば、ぜひご協力をお願いしたいところです。

「住宅火災ゼロ」は世界標準になる

Q:今後の展望を教えてください。
A:目標は、「燃えにくい製品をどこでも買える社会」をつくることです。将来的には、スーパーやホームセンター、通販でも防炎商品が当たり前に並び、誰もが手軽に選べるようにしたい。「大切な家族を自分の手で守る」という意識が、社会に広がっていくことを願っています。そして最終的には、“住宅火災ゼロ”を実現する。そのために、製品開発・教育・普及活動の3つの軸で挑戦を続けています。made in Japan の繊維で住宅火災ゼロ製品が世界中に普及すれば、日本発の「住宅火災」の無い世界が実現できます。

火災を防ぐことは、人の命を守ること。そしてその積み重ねが、社会全体の安心へとつながるんですね。T・Sトレーディングが手掛ける「燃えにくい製品」は、安全のための道具であると同時に、“未来への投資”でもありました。「燃えにくい暮らしを、あたりまえに」田中さんの挑戦は、これからも確実に日本各地へ広がっていきます。

「現代の日本は、海外のIT企業が主導する時代にあります。でも、だからこそ日本にしかない良さを信じてほしいと思います。日本のモノづくりには、世界に誇れる繊細さと誠実さがありますから。それを大切にしながら、自分が本当に必要だと思うことを突き詰めてほしい。自分が信じる道を一歩ずつ進めば、必ず形になると信じています。良いものをつくれば、世界は必ず振り向くものです。その思いで、私たちも挑戦を続けています」