リレーユースを思想から文化へ

TAGUCHI REIKO

田口 玲子

株式会社コメ兵

國學院大學法学部を卒業後、出版社で雑誌編集に携わり、その後大手広告代理店でクロスメディアプロモーションのクリエイティブディレクターとして活躍。独立後はイタリア料理店の経営を10年ほど経験し、2023年より株式会社コメ兵の広報部に所属。多岐にわたるキャリアを経験し、現在は「リレーユース」という思想を世に広める役割を担っている。

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AICHI

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物の価値をつなぎ続けてきた会社

愛知県に根を下ろし、全国に展開する株式会社コメ兵。「リユース」という言葉が今ほど一般的でなかった時代から、物の価値をつなぐビジネスを続けてきました。戦後の創業からどのようにして「ブランドリユース」のトップランナーになったのか、そして、同社が目指す「リレーユースを、思想から文化へ」というビジョンに込められた熱い思いを、広報部の田口玲子さんへのインタビューを通じて深掘りしていきます。

Q:どんな事業をされているのか、改めて教えてください。
A(田口さん):私たちはブランド品のリユース業を手掛けています。簡単に言うと、ブランド品の買取と販売、この両方をやっている会社です。

古着からブランドリユースに至るまで

Q:「コメ兵」という名前からよく「お米屋さん」と間違えられると聞いたのですが、社名の由来について教えていただけますか?
A:そうなんです(笑)。よく聞かれるポイントでして、特に東京の方など愛知以外ではお米屋さんだと間違われることがよくあります。実は、創業者の実家がお米屋さんを営んでいたんです。創業者は家業を継がずに、その屋号だけをもらって「米兵商店」という古着屋を始めたのが始まりで、「コメ」はお米の「米」から来ていますが、お米を扱ったことは一度もないんですよ。

Q:創業当時はブランド品ではなく、古着からスタートされたんですね。
A:会社の成り立ちは戦後間もない1947年に遡ります。第二次世界大戦後でまだいろんな物資が不足していた時期に、創業者が古い着物などを買って売るということを始めたんです。これが面白いくらいに売れたので、名古屋の大須に5坪の店舗を構えたのがコメ兵のルーツです。最初は着物だけでなく、家電や家具など、本当に何でも買って売っている時期もありました。その中で、ブランドリユースにビジネスチャンスを感じ、そこに特化する形でビジネスモデルが確立されていったという経緯です。

独自性の高い組織づくり

Q:他社にはない強み、優位性はどんなところにあるとお考えですか?
3つあります。1つ目は、私たちがブランドリユースに特化している点。そして2つ目は「商品センター」という中央集約的な仕組み、最後にそれを支えるプロフェッショナルな人材育成です。
商品センターには、年間約240万点の商品が流通します。そこから得られる知見は、鑑定や査定を行ううえで大切な教材にもなりますし、真贋AIの教師データにもなります。また、メンテナンスや必要に応じた修理を丁寧に行うことで、コメ兵なら安心という信頼の裏付けになっています。さらに、商品のコンディションや需要を見分けて、商品を最適な販路(法人オークションでの販売、個人への小売り)へ迅速かつ的確に振り分ける機能も持っており、リレーユースのビジネスモデルを業界のトップランナーとして推進していくのに必要不可欠なのが商品センターです。プロフェッショナルな人材育成に関しては独自の研修プログラム、鑑定士への登用試験など、従業員の皆さんが伸びるための仕組みが用意されています。また、“ほめる文化・認める文化”の醸造によって働きやすい、伸びやすい環境になっているとも感じます。

Q:自社で鑑定士を育成されていると伺いました。
A:買取というのは、リユース業の生命線です。そもそも買い取らないと、売るものがありませんから。当然、その査定と買取業務を行う鑑定士のお仕事は、会社のなかでも花形であると同時に、大切な仕入れを担う重要な業務です。
当社には、社内資格制度があり、この試験に合格しないと買取はできません。ジュエリー・貴金属、時計、ブランドバッグ、衣料品の4ジャンルがあり、鑑定士のレベルによって、数週間〜約3ヵ月の研修を受け、試験に合格する必要があります。

Q. 匂いを嗅いだだけでブランドが分かるといった神業を持つ方もいらっしゃるとか…?
A:そうなんです(笑)。経験を積んでもうAIよりも早く見分けがつく人もいますし、中には匂いを嗅いだだけでどのブランドの何なのかが分かる熟練の鑑定士もいるんですよ。そういう「鑑定士の中の鑑定士」が、特に弊社商品センターにはたくさんいます。鑑定だけでなく、商品のメンテナンスや掃除も、ブランドの価値を損なわないようにプロが丁寧に行い、最近では「真贋AI」といったテクノロジーも積極的に導入して、人の目とテクノロジーの両方で鑑定精度を高めています。お客様に安心して取引していただくための、私たちのこだわりです。

Q:社風として大切にされていることはありますか?
A:「挑戦する」という風土があります。若い内からいろんなことに挑戦させてもらえる環境ですね。「やってみよう、応援しよう」というのが会社のクレド(行動指針)にもなっており、20代で店長になったり、新しい企画や期間限定のポップアップ企画を任されたりといった事例も少なくありません。若手社員の「やってみよう」という意欲を後押しする、温かい雰囲気が会社全体に根付いていると思います。

リレーユースを思想から文化へ

Q:今後の目指すビジョン、方向性について教えてください。
A:私たちが掲げているビジョンは「リレーユースを、思想から文化へ」です。単なる物の「リユース(再利用)」という言葉で終わらせず、その物に込められた思いや価値を次の人へとつないでいくという考え方を「リレーユース」と呼んでいます。単なる機能的な再利用だけでなく、前の持ち主がその物を大事にしていた気持ちや、物にこもった思いのような、目に見えない価値や思想までを、次の使い手にリレーしていく。そういった考え方を、社会の文化として根付かせていきたい。これが私たちの壮大な目標です。

戦後から一貫して「物の価値をつなぐ」というリユース業を続けてきたコメ兵。その信頼は、年間約240万点を扱う商品センターという仕組みと、匂いでブランドを当てるほどのプロフェッショナルな鑑定士による「目利き力」に支えられています。そんな彼らが目指すのは、単なる再利用ではない「リレーユースを文化に」という壮大なビジョン。これからも愛知から、そして全国から、物の価値と人々の思いをつないでいくことでしょう。

「特に20代での経験は、その後の職業人生の基本になります。たとえ周りから無謀だと言われるようなことでも、まずは挑戦してみてほしいです。心配してくれる人もいるかもしれませんが、挑戦してみれば、意外と乗り越えられる壁も多いはずです。自分を信じることが何より大切だと思います」